一気断薬と離脱

一気断薬の衝動は、離脱に長い間、苦しむものにとって一度は感じたことがあると思う。

一気断薬は、ベンゾの断薬では禁じ手というのが定説だ。減薬は月単位、年単位でゆっくりと勧めるブログをよく見る。

一気断薬をしてとんでもない離脱に見舞われたというブログが多いが、不思議にそういう人ほど、その後、苦難を乗り切って快方に向かっていたりする。一方、慎重に慎重に3年くらいかけて、ゆっくり減薬とステイを繰り返し、途中でブログが放置状態になっているのも複数みたいので、複雑な気持ちになる。

僕は、一気減薬とゆっくりの減薬を両方体験したので、その時のことについてお話ししたい。

【向精神薬の一気断薬】

僕の最初の減薬は、セロクエル、リフレックスを含む4種類の向精神薬の一気断薬を2018年1月~2月にかけて行ったのが最初だ。向精神薬は一気断薬を絶対しない方がいいと思う。なぜなら離脱が想像を超えて酷いからだ。

僕は、向精神薬を耐性ができて効かなくなった眠剤の代わりに服用していた時期が9カ月程ある。当時は、新しい治療法にやっと出会うことができたと、体調が悪くても、治療には前向きだった。しかし、精神的、肉体的な不調は限界を越していた。

このときは、離脱や断薬の知識も全くなく、とにかく体調と精神状態がどんどん悪化し、主訴の不眠も絶不眠が増えてきたので、医者に相談するとセロクエルとリフレックスを増薬しようということになり、「冗談じゃない、このままでは殺される」と自己判断で一気断薬した。ただ、医者に減薬するときには1~3か月かけてゆっくりやらないと大変な目にあうと最初に言われていたので、2か月かけて減薬したのだ。

このときの離脱はとてつもなかった。だいたい、減薬後2週間くらいで離脱が酷くなり、2か月後が一番酷かった。3か月経ってもうつ状態だった。やっと普通の生活ができるようになったのは4カ月後の5月くらいではなかったかと思う。

目まい、ふらつき、頭の締め付け、離人感、肩の硬直、便秘と下痢の繰り返し、喉の違和感、喉のぶつぶつ、吐き気、震え、胸の締め付け、胸のドキドキ、喉の渇き、不安、脱毛、感情抑制ができない、ゾワゾワ感、味覚異常、食欲不振、そして最終的にアカシジア…と肉体的、精神的不調のオンパレードだ。また、人間の欲や覚はすべておかしくなった感じである。最終的には希死念慮に取りつかれどうにもならなくなった。今、生きて入れるのが不思議なくらいに追い込まれた。しかも、肩の硬直と消化器系の異常は眠剤の減薬を始めた2018年7月でもまだ60%くらいは残っていた。

眠剤と向精神薬のどちらの離脱が酷いかと言われれば、それはおそらく向精神薬だと思う。まず、眠剤と違うのは、精神的な離脱が強いことだ。最終的には、極度の不安、恐怖と全身の硬直でじっとしていられなくなり、アカシジアを発症する。アカシジアは、もう2度と体験したくない今まで生きていて最も恐ろしかった症状だ。米国ではベンゾジアピンからアカシジアを発症し、亡くなった人の記録が残っているが、表に出ていないだけで日本でもおそらく多くの方がアカシジアで自殺に追い込まれているだろう。

向精神薬というのは、健常者が服用すると抗不安ではなく、増不安薬だと断言する。おそらく、うつ病患者でも同じだろうが、僕はうつ病患者ではないのでわからないが。向精神薬というのは、セロトニンを分泌促進させ一時的に精神を安定させるらしい。僕は、全くそういう感覚はなかったが、服用した1日目だけ、日中に10年振りくらいに、やたらあくびがでて、眠気がし、30分昼寝ができてびっくりしたのを覚えている。その後は一度も昼寝ができなかったが、夜は眠れた。しかし、向精神薬も耐性がすぐにできる。人によっても違うが僕の場合、1~3か月で完全に耐性ができてしまった。耐性ができるということは、それ分、セロトニンを自然に分泌する機能をぶっ壊したということなので、向精神薬を増量しないと不安が増長する。魔の無限ループの仕組みは、ベンゾジアピンと同じだ。

今更だが、向精神薬は、もっとゆっくりと時間をかけて減薬しなければならなかったと思う。

【眠剤の断薬】

2度目の減薬は、2018年7月から始めたハルシオン、デパスの減薬である。眠剤の減薬は結果的に6か月で終了した。しかし、これはもう少し減薬期間を短縮しても問題なかったかもしれないと思っている。

眠剤の一気断薬もしない方がいいと思う。しかし、減薬途中で部分的に一気断薬するのは、減薬過程を短縮させる良い方法になるかもれない。

2月で向精神薬を断薬した後に、2~3種類の眠剤を常用していたが、結局どの組み合わせもだんだんと効かなくなってきた。最初は6時間、そのうち4時間になり、2時間になり、だんだん絶不眠日が増えてきた。2~4週間に一度、他のベンゾ系眠剤を変えてもらうのだが、もう効かないのである。正直、眠れないのでODも何度かした。しかし、やはり3~4日すると2時間しか眠れなくなった。そして、7月下旬に夜中に、何度も薬を割って足して飲むようになり、追い込まれていった。

さすがに、この状態では、また向精神薬の時のように薬が増えて行き、最終的に断薬して希死念慮に取りつかれると怖くなり、精神科医に相談すると、何種類かの向精神薬を眠剤と一緒に処方するとのことだった。これで、目が覚めて自己判断で断薬することにした。

まずは、7月中に今まで服用していた様々な眠剤をハルシオンとデパスの2種類にした。この2種類を残したのは、この2種類が最も睡眠に効果があると、自分の体験から把握していたからだ。

前回の向精神薬の減薬では、とんでもない離脱に見舞われ、当時もその離脱に苦しんでいたので、眠剤の減薬はとても慎重に時間をかけ少しづつ減薬を始めた。順序としては、まずデパスから始め、ハルシオンを後に減薬することにした。なぜなら、ハルシオンの方が入眠効果が高いからだ。そして、原則どちらの眠剤も最初10~30%程度、多めに減薬し、様子を見て、問題が無ければ1%づつ、問題がなければ2%づつとスピードアップしていこうと計画した。そして、結果的に断薬まで6か月かかった。

眠剤の減薬は、最初は、順調だった。最初、デパスを33%減薬した時は、離脱がガーンと来た。しかし、離脱はある程度想定していたし、発症した離脱は、めまいとふらつきが主な症状で、許容範囲だった。しかもその離脱も1週間程度しか続かず、それまで苦しんでいた不眠、肩の硬直、便秘もどんどんよくなっていった。

しかし、デパスの減薬が半分くらいになると、11月頃から症状は悪化、結局、ハルシオンの断薬が終わる1月まで悪化し続けた。ただ、眠剤の断薬の辛さは、向精神薬の時の離脱症状が10だとすると3~4の辛さだ。向精神薬の時とは、レベルが違うのだ。向精神薬の時と比べて辛いのは、絶不眠が永遠と続くことくらいだ。精神的な不調も無ければ、アカシジアも無い。ましてや、希死念慮などとは無縁だ。

眠剤の減薬が途中から辛くなったのは、おそらく、眠剤の半減期が関わっていると思われる。ベンゾの絶対濃度の問題ではないのだと思う。ハルシオンの半減期は2時間程度、デパスは4時間くらいだ。半減期が短いので、服用時前後はベンゾの血中濃度が高く、朝昼夕は血中濃度が低くなっていく。その変化が大きいほど、離脱は強く発症する。

僕は、血中濃度の変化を抑えるために、デパスを1日4回に分けて飲んでいた。最初に33%を減薬し、残りの67%を50%以上減薬され4回に分けて服用されているわけだから、1回当たりは8.3%以下になる。デパスの血中濃度は1日中0に近いわけだ。そうすると、1日のうちで、就寝前に飲むハルシオンの血中濃度だけ突出して高くなる。だから、日中の離脱(肩の硬直)が悪化していたのだ。

肩の硬直は、デパスを50%減薬してからは、ずっとMAXレベルで痛い。

そう考えると、おそらくデパスを50%程減薬した時点で、デパスとハルシオンを一気断薬しても、残る辛さは同じだったのではないかと思う。僕にとって、眠剤でもたらされる主な離脱は、肩の硬直と慢性便秘の2つだけ、それに主訴の不眠だ。減薬中、最後にデパス、ハルシオンの断薬をスピードアップした際に新しく生じた離脱はない。

 便秘は、デパスとハルシオン両方を断薬してから解消した

 肩の硬直は、デパスを33.5%以下にしてからMAXで辛い

 そして睡眠は、ハルシオンの減薬途中で絶不眠が連続するようになった。

おそらく、11月の時点で残るデパスとハルシオンを一気に断薬しても、上記3つが11月に起こっただけだったのではないだろうか?眠剤の減薬はもっと短縮化できたのではないかというのが、僕の事後の感想だ。

ただ、読者の方にくれぐれも注意していただきたいのは、ベンゾジアピンや向精神薬の減薬は、原則は「1日0.5~1%づつ、月単位、年単位で時間をかけて行う」のが正しいのだ。

ただ、断薬後の苦しさが同じなら、減薬の期間は短い方が良いと思う。少なくとも僕はそうだった。減薬している時は、夜になると眠れもしないのに何で眠剤を飲むのか、また今日もGABA受容体をぶっ壊す毒を飲まなければならないのかと暗くなり、精神的にも悪い。

もし眠剤を減薬中に、減薬期間を短縮したいなら、離脱を自覚できるくらいの多めの量を減らし様子をみればいい。僕の場合、常用時に何度も減薬を何度も試みており、デパス1.5㎎を0.5㎎程度、ハルシオンなら0.125㎎程度、減薬しても大した離脱はでないことは知っていた。だからデパスは最初に0.5mgを一気に減薬したのだ。そして、離脱がでるようだったら、また増薬して、毎日1%づつ減薬する方法に戻ればいいのだ。

眠剤は半減期が短いものが多い。離脱を軽減しながら減薬するためには、なるべく日中にも眠剤を服用した方がいい。僕の場合だが、デパスは4回に分けて服用した。ハルシオンの場合は、半減期が短すぎ血中濃度を安定させようとしたら、日中に8回服用しなければならないのでハルシオンは分散服用はしなかった。

最後になるが、一気断薬はなるべくやらない方がいい。それだけは、本当だ。僕の場合は、避けては通れない最大の苦痛「絶不眠」と体力が残っているうちに早く対置したかったのが理由で眠剤の断薬に一時的にプチ一気断薬を取り込んだ。今も離脱に苦しんでいるが、これは一気断薬でもたらされた離脱ではなく、ゆっくり減薬していても生じた離脱だと感じている。

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