不眠症の勘違い 不眠の原因

減薬・断薬が不眠症の原因だと確信したのが2018年7月だった。それまでは、不眠症について多くの勘違いをしていた。不眠症患者が出口の見えない魔の無限ループにはまる最大の要因は不眠症に対する勘違いだと、私は思う。今日は、その一つである不眠症の原因について私の体験を元に考えてみたいと思う。

【初期不眠は仕事のストレスが原因】

私が睡眠薬を常用するようになったのは2011年4月からだった。そう、あの東日本大震災の直後からだった。しかし、それ以前にもおそらく少なくとも5年は、海外旅行に行ったり、ネット通販でハルシオンや他の睡眠薬を米国、タイなどから購入し、常備薬として眠れない時、旅行の時に利用していた。

しかし、最初に通院した時は、睡眠薬が無いと全く眠れなかったわけではない。殆ど眠れない日が多かった程度だった。だから、睡眠薬が無いと一睡もできなくなったのは精神科に通院してから6ヶ月後くらいの、おそらく2011年の後半くらいからだ。

その後も、不眠はどんどん悪化していった。この時、通院後に不眠が悪化したという認識を持てばよかったと今になって思う。

地震後に生じた重度の不眠症の原因は、明らかに仕事のストレスだった。私は、小さいネット会社の全体事業の売上と新規事業立ち上げに責任を追って来た。つまり、財務と管理系以外は、すべて私の責任範囲だった。2007年に役員で参加して、大赤字の会社の構造改革を実施し、2年間で黒字化、5年間で3事業を立ち上げ、黒字化させてきた。3年目、4年目とやっと利益が出てきて、大きな新規事業を立ち上げようとしていた矢先に大地震が起こった。

ネット事業というのは、サイトやアプリに集まる客数で業績がほぼ決まってしまう。その客数のことをトラフィックというが、このトラフィックの動きや売上がスマホ上で、リアルタイムで把握できるようなシステムになっていた。だから、地震が起こった1時間後に関東地方のサーバーファームが障害を起こし、トラフィックが急減するのがリアルタイムでわかった。そして、通常は10分ごとに更新される売上も殆ど動かなくなっていった。これがどれだけ精神的に悪かったかは、想像できると思う。

その後、3ヶ月、私は自分の能力の200%で思考を巡らせ、戦略を1週間練って1週間単位で実行していった。これが当り、結局2011年は前年度比135%で過去最高の業績になった。しかし、今考えてみると、私くらいの能力でこんなに上手くいくわけがないのだ。あの時、何を見てもすぐにアイデアが浮かび、ノートをつけ、戦略に簡単に昇華させられた。それが、24時間続くのである。睡眠薬を使って落ちるように眠っても、3時ころに急に飛び起きて、メモをとったりしていた。そして、そのアイデアが今では想像ができないほど的を得たものなのだ。どうしてこんなに冴えているのかと不思議だった。

もうお気づきだとうろ思うのだが、あれは睡眠薬の離脱(おそらく服用間離脱)でハイになっていたのだ。あの冴えた頭は、私の脳ではなかったのだ。あの年、多くの会社が廃業に追いやられた。うちの会社のお客さんも5%くらいは連絡が取れなくなった。私の事業も地震が起きた3月、4月、5月くらいは売上が半減した。しかし、私の事業は、それをカバーし、更に業績を良くすることができた。こんなことができるはずがないのだ。こういう非常時には、会社が潰れないように頑張ることは重要だ。しかし、私のような凡人は、潰れない程度に頑張ったら後はヘラヘラしているのが良いのだと最近になって思うのだ。私は仕事が好きだし、やりがいがある仕事は面白い。しかし、仕事はしすぎてはいけない。それは、肝に命じて欲しい。

睡眠薬を常用開始して、いつもより、体調が良い、頭の回転が良いと思ったら、それはおかしいと気づいて欲しい。それ自体が異常なのだ。

【不眠悪化は仕事のストレスが原因ではない?】

良い状態は長続きはしなかった。頭はその後もハイになった状態が2〜3年続いたが、睡眠は細切れ状態になり、時間もだんだん短くなってくる。いつも疲労感があり、定期的に精神的に不安定にもなる。しかし、本人は身体的、精神的不調のすべてが不眠が原因だと信じている。

精神科に1年も通院していると、睡眠薬は2種類以上処方されるし、試す種類も増えてくる。効果が無くなると、増薬したり、組み合わせを変えたり、戻したりして、なんとか睡眠時間を維持しようとする。しかし、それでも睡眠は不安定になり、短時間化してくる。増薬、変薬は単にベンゾによりGABA受容体の劣化を進めているだけであるしかし、本人はそんなことには気づかない。医師には、マイスリーはベンゾではないので安全だとか、向精神薬はベンゾより耐性がつきにくいので安全だとか、ベルゾラムは新薬で作用機序がベンゾとは違うので安全だとか説明されるが、そんなのはすべてウソか、デタラメである。睡眠薬や向精神薬は、すべて脳の機能を増幅したり、神経物質も吸収を阻止したりして、作用を発現させる。そして、どの薬も該当する受容体に作用するので、使っているうちに該当する受容体は劣化する。マイスリーも、向精神薬も、耐性はすぐにつくし、かなり酷い離脱がある。患者で大丈夫だという人は、離脱を発症していないラッキーな人というだけで、その人もこれからいつ発症するかはわからない。

こうして、通院して睡眠薬や向精神薬を服用すればするほど、不眠が悪化し、体調が悪くなるのである。今考えると、精神科に通い始めた時より、ひと月毎に、明らかに不眠は悪化し、体調が悪くなっていた。ところが、本人は不眠の原因が睡眠薬だとは全く思なかった。

【不眠悪化の原因は離婚か?】

私の場合、最初の2〜3年は仕事のストレスだと信じていた。しかし、仕事が上手く回ってきて、肉体的、精神的な負担が軽くなってきても、不眠も体調も悪化していく。そうすると、実は20年前に離婚したことが原因なのかもしれないなどと、当時はもう全く考えていなかった過去の嫌なことまで原因に持ち出して、なんとか原因を探そうとした。

そういう原因探しは、その後も永遠と続いた。私は、2018年年初に向精神薬への変薬が原因で酷い離脱のオンパレードを経験し、希死念慮に追い込まれた。前後の2〜3ヶ月は言葉通りの生き地獄で、最悪期の2週間は8割方自殺してもおかしくない状態だった。もう仕事は正常にできないと判断し、会社に相談して1ヶ月休みをもらい、仕事の負荷を一気に1/5程度まで落としてもらった。これで、仕事の精神的、肉体的な負荷は一気に落ちた。ところが、不眠は一向に改善しなかった。しかも、精神的にも不安定な時間が続いた。

もう仕事のストレスが原因で不眠になっているという仮説は成り立たなくなった。そこで、他にいろいろとストレスを探してみた。しかし、思い当たらない。仕事のストレスから解放されても、不眠は悪化するばかりだし、精神的にも不安定だ。

やはり20年前の離婚が心の傷になって残っているのだろうか?僕はそんなに傷心していたのか?老後の不安だろうか?老後のことなど、当時は全く考えたことがなかったが、潜在的に心配しているのかもしれない。私のストレスはなんなのだろうか?などと原因を探すのである。

【不眠悪化の原因は睡眠薬】

しかし、不眠悪化、体調不良、精神不安定は、すべて睡眠薬が原因だった。それは、書籍やネットの情報で知り、断薬後にハッキリした。

不眠症で悩んでいる人は、これだけは覚えておいて欲しい。

「通院前より不眠が悪化していたら、睡眠薬が不眠悪化の原因だ」

不眠悪化の原因は睡眠薬だ。ここで、なぜ不眠と書かないのだろうか?不眠の最初のキッカケは、ストレスか生活習慣が原因だ。仕事、家族のトラブル、失恋、経済的困窮などのストレスや不規則な生活習慣は容易に不眠を誘発する。

しかし、この時点で絶不眠になっている人は殆どいない。不眠に悩む人でも、睡眠薬を常用していなければ2〜3日間起き続けようとすれば、必ずどこかで眠れるはずだ。私のブログを読んでいただければわかると思うが、私は自分より酷い不眠患者のブログも動画も見たことがない。しかし、そんな私でも精神科の初診では、不眠といっても2〜3時間は眠れていたし、3日も起き続けていることはできなかった。

重度の不眠で悩む人の多くは、睡眠薬を飲んでいくうちに、初診のときよりも不眠が悪化しているはずである。その不眠の悪化は、もうストレスや生活習慣が原因ではなく、医師の処方した睡眠薬が原因なのだ。

睡眠薬は、初診後、最初の2週間くらいは落ちるように眠ることができて嬉しくなってしまうが、だんだん耐性ができ、眠れなくなる。そして、不眠を悪化させ、筋肉を硬直させ、精神を不安定にさせ、最終的には「死にたくなる」薬なのだ。なぜか社会問題化しないが、芸能人が自殺すると、必ずと言っていいほど睡眠薬の多剤服用が見つかる。睡眠薬と自殺を結びつけることはメディアの禁じ手なのだろう。

断薬後、はっきりわかったことがある。断薬後は、最悪の離脱症状は悪化し、不眠は更に悪化する。私の場合、離脱症状の中で、肩の硬直が最も辛かったのだが断薬後は今までで経験したことのないレベルまで肩の痛さ、辛さが悪化した。また、睡眠時間も減薬期間は、0〜3時間取れていたが、断薬後は6ヶ月間、1日平均睡眠時間が殆ど0である。ところが、驚いたことに、睡眠薬を服用していた時のような不安が全くないのだ。今までは、

仕事のストレス or その他のストレス? → 精神不安 → 不眠悪化

と考えていた。しかし、不安もうつ状態も絶不眠が6ヶ月も続き、肩に切れるような激痛が走っているのに精神的に不安定になることがないのだ。それでは、仕事のストレスも離婚のストレスも関係なかったじゃないかと、断薬して改めて気づいたのである。

 ? → 不眠悪化

それでは、不眠悪化の原因はなんなのだろうか?私は、自信を持って睡眠薬そのものだったと断言できる。

それは、断薬後の私の経過を見れば明白である。まだ、私は睡眠が取れたといえる状態ではない。眠れたというより、意識が断絶したと表現した方がよい。そういう時間帯があったか無かったかを毎日繰り返している状態だ。それでも、断薬後、確実に不眠は回復している。

1月11日の断薬後、本当に大雑把に睡眠状態を下記にまとめると:

15〜30分睡眠の取れたと思われる日数

1月 0

2月 0

3月 0

4月 8

5月 6

6月 11(〜25日まで)

まだ、眠った感覚は全くない。一瞬意識が無くなったレベルだ。大体、12時に就寝して、外が明るんでくる6時か7時までは全く眠れない。そこから、ほんの15〜30分程度意識が落ちる感じだ。3月まではこういう意識の瞬断もなかったので、前進したと思う。

ベンゾが身体から抜けるのには、1ヶ月とかからないそうだ。だから、2月には私の身体にベンゾの残留はないはずである。しかし、問題はベンゾの体内残留ではなく、GABA受容体の回復なのである。脳の細胞が完全再生するまでには9ヶ月かかるといわれている。断薬後に私の脳の細胞が完全再生するには、まだ3ヶ月程時間が残されている。この間に、3時間程度は眠れるようになるのではないかと推測している。私が、2011年に初診で睡眠薬を処方してもらった時、おそらくだが、睡眠時間は3時間程度だったと思う。よく、明け方まで眠れず5時ころになると落ちて、遅刻してしまったことがあった。つまり、私の不眠状態の初期状態は平均睡眠時間3時間なのだ。まずは、そこまで回復すれば良いと思っている。

断薬後の睡眠日数の増加を見ても、タイムラグはあるが、睡眠薬 → 不眠悪化 という因果関係は明確である。この期間、僕は何の治療もしていないし、飲み続けた漢方薬、サプリなどは何もない。ベンゾを飲まないことを続けただけなのだ。

私の体験から結論付けると:

仕事のストレス → 初期不眠

睡眠薬 →  不眠悪化

初期不眠と不眠悪化の原因は分けて考えなければならないということだ。

【不眠になったら】

まず、どうしても眠れず精神科に行く場合、睡眠薬や向精神薬を処方しない精神科に行くべきである。精神科の医師は、睡眠薬か向精神薬を処方するのが仕事だと勘違いしている。しかし、それは本当に特殊な場合を除いては、不眠症、精神疾患を悪化させているだけなのだ。

もし、生活指導や認知行動療法などで不眠治療を試みる医師と出会えたなら、貴方は世界一ラッキーな不眠症患者だ。ぜひ、他の不眠症患者に本ブログのコメント欄でその病院や医師を紹介してもらいたい。しかし、99%の確率で、貴方が住む地域で睡眠薬を処方しない精神科を見つけることはできないだろう。もし、そうなら精神科には行かないことだ。行っても、後から後悔するだけだろう。

初期不眠は自分でコントロールしよう。薬を使うのは絶対に止めたほうが良い。まずは、行動認知療法で眠りを管理することから始めよう。方法がわからない場合は、説明するブログを書くのでご要望があれば、コメントして欲しい。

不眠を治療するために精神科に行くと不眠は必ず悪化する。

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不眠症の勘違い 不眠の原因” への3件のフィードバック

  1. Shinさま、いつも素晴らしいブログの記事拝見しております!あまりにも素晴らしい内容なので称賛のコメントいつも書きたかったのですが、自分自身まだ何も改善されていないのでコメント出来ずにいました。でもとても素晴らし内容なのでこれからもShin様にはこのブログを続けてもらいたいし、読むのも楽しみにしております。何故睡眠薬が完全に辞めれないかと言うと断薬3、4日目にしてとても気分が悪く、眠くなり何も手がつかない状態になってしまうのでいつも断念してしまいます。いつか、辞めれればっといつも願っております。此れからもこの素晴らしいブログの発信を頑張って下さい!応援しております!!

    1. きどさん、お久しぶりです(^^)

      最近、全然書き込みがないので、もしかしたら離脱体調を崩されてしまったのかと心配しておりました。

      睡眠薬をやめれない理由は皆同じです。お気持ち非常によくわかります。冷たいようですが、不眠症が極限まで悪化し、死を覚悟しないと出来ないのかもしれないと、私自身思っています。

      その時になって私のように治療法が見えないまま真っ暗闇の中を2年間も彷徨わないように、断薬という選択肢があるんだということをブログで伝えられればいいのだと最近思っています。

      正直、私もタイの不眠症治療でどん底まで落とされた、死を意識したからこそ断薬に踏み切れたのだと思っています。

      だから、きどさんも断薬という最期の治療法が自分には残されていることだけを覚えておいて下さい。いづれ、必ず役に立つはずです。

  2. Shin様、お優しいメッセージとアドバイスをどうも有難うございます!!!本当にShin様を尊敬します!では、頑張ります!此れからも素晴らしいブログの更新頑張って下さいね!応援しております!

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