ハルシオン再考

ハルシオンは、切れ味の良い睡眠薬と言われている。これも私が最後まで服用し、断薬に非常に苦しんだ薬なので風化しないように、これからも話題にしていこうと思う。

ハルシオンは、おそらく2000年くらいから頓服薬として服用していた。以前は、米国やタイで簡単に買えたので、海外旅行に行った時に薬局で2ヶ月分くらい買って、1錠を割って飲んでいた。当時は、ハルシオンを飲むと気を失いそうになり、爆睡できた。もともと僕は、40代でも昼頃までは余裕で眠れた。13時間以上眠って頭が痛くなり、夕方に再び眠り、その後2〜3日眠りすぎて、調子が悪くなることもしょっちゅうだった。不眠どころか、過眠体質であった。

ところが、大学生の頃にウィンドサーフィンをやるようになってから、湘南に夜中にでかけて駐車場を陣取り、朝まで寝て待つような生活をしているうちに、夜になっても眠れないことが少しづつ多くなってきた。大学を卒業し、留学を終えてから、就職するようになると、そういった自堕落な生活を続けているわけにはいかない。それで、おそらくだが1990年代のどこかでトランキライザーを飲んだ気がする。それから、いつ頃からハルシオンに変わったのかは記憶が定かではない。その後も、ハワイやオーストラリアの薬局でハルシオンを購入してきた記憶はある。しかし、病院で処方され常用するようになったのは2011年以降だった。

ハルシオンは切れ味が鋭い睡眠薬と言われる。この表現は的確だと思う。服用して、30分もすると強い眠気が襲われ、倒れるように眠ってしまう。僕も最初はそうだった。しかし、いつの頃からかハルシオンで入眠できても、中途覚醒をするようになり、他の睡眠薬を併用するようになる。それからは、睡眠薬や向精神薬を増量していく度に、不眠がどんどん悪化してくる。そして、常用後6年程経つと3種類以上の睡眠薬、向精神薬を服用しても入眠さえできなくなってしまった。そのすべてのきっかけを作ったのはハルシオンである。

ハルシオンは、半減期が極端に短く、薬価が高い。これを解りやすく言い換えれば、効き目が強いが短時間で効かなくなる薬なのである。こう書くと、すぐに眠れて、起き抜けが良い薬のように勘違いする。しかし、それは最初の2週間〜1ヶ月程度で、その後は睡眠状態、筋肉の硬直、精神状態を処方量と処方期間に比例してどんどん悪化させていくのだ。しかも、効果が2時間程度と短いので、薬が切れたときの苦しみはとてつもない。これは一種の禁断症状だ。

具体的にハルシオンの禁断症状がどんなものかを話そう。ハルシオンが切れると、覚醒するので、それまで睡眠が取れていても、ハッと起きてしまう。これも禁断症状の一種だ。しかし、本当に苦しい禁断症状は、筋肉の硬直や精神に与える影響だ。ハルシオンを服用し続けると、筋肉がどんどん強張っていく、そして精神状態も不安定になり意味不明な恐怖心にとらわれる。しかし、ハルシオンを飲むと筋肉は一時的に緩み、精神的な緊張も和らぐ。しかし、服用後2時間経つと、肩や首などの筋肉が寝る前にも増して酷くなった気がする。そして、覚醒したあとは、不安でしかたなくなる。イライラして、不安で、眠いはずなのに、意識がやたらはっきりしてくる。

これはすべてハルシオンの離脱症状なのだ。離脱とは、作用だったはずの症状緩和を反対に悪化させてしまう症状だ。大まかに説明すると、ハルシオンを含むベンゾ薬は半減期と薬価が違いはあれ、作用はすべて同じである。主な作用は:

鎮静(睡眠)

筋弛緩

不安軽減

の3つである。しかし、2週間以上常用すると、これがすべて逆に作用する。つまり:

鎮静 → 覚醒、興奮

筋弛緩 → 筋硬直

不安軽減 → 不安増幅

つまり、2週間以上服用すると、治療したかった症状と正反対の症状を引き起こすばかりではなく、他の体調不良も引き起こすのだ。ただ、離脱が生じるのはベンゾや向精神薬を服用した6割程度と言われており、すべての患者が離脱を起こすわけでもない。しかし、こういった統計も離脱発症の期間が人によって違うことから当てにならない。僕は実際にはもっと高い割合で離脱が生じると思っている。実際、私も離脱を認識したのは、常用後8年目である。それまでは、すべての体調不良は、何か他の病気か、不眠か、加齢が原因だと思っていた。

ハルシオンは半減期が極端に短い。効果は2〜3時間で切れてしまう。だから、ハルシオンの血中濃度は急激に上がり、急激に下る。離脱の辛さは、血中濃度の変化幅と比例する。だから、ハルシオンの離脱はバックドロップ型の急降下するような辛さだ。

ハルシオンは、断薬も難しい。ハルシオンは減薬していくと、ある一定量を越して減薬した頃から、急激に中途覚醒が早くなり、そのうち入眠ができなくなる。他の睡眠薬を服用していても、入眠できなければ睡眠は取れない。ハルシオンは離脱よりも、睡眠が取れなくなること自体の精神的ショックの方がきついかもしれない。多くの不眠症患者は、この恐怖からハルシオンを減薬できない。

ハルシオンより安全だと言われているマイスリーも同じような性格の睡眠薬である。効き目はハルシオンよりも穏やかだが、やはり入眠に効果が高く、半減期も短い。こういう薬は最も減薬が難しいのだ。

ハルシオンはハイになる。これも最初はよくわからない。しかし、僕はハルシオンを飲むようになってから、よくハイになっていたと最近思うのだ。仕事をしていて、やたら頭が冴え、アイデアがどんどん浮かんでくるのだ。就寝しようとしても、頭と目は冴え、全く眠れない。だから、またハルシオンを飲むという悪循環が続いていた。ハルシオンは、脳の鎮静機能を飲めば飲むほど弱体化させる。そのため、半減期をすぎると頭がどんどん冴えてくるようになるのだ。頭が冴えるというのは、通常良いことだと思うのが普通だ。だから、当時は僕はモチベーションが高く、頭が冴えているのだと勘違いしていた。しかし、これはハルシオンによって、頭も身体もスイッチオフできない状態になってしまっているのである。ソフトウェアの不具合で熱くなったPCはスイッチを切らなければならない。しかし、稀に物理的なスイッチを押してもシャットダウンできなくなることを経験したことがあるだろうと思う。そのままにしておけば、PCはそのうち熱くなりすぎて故障してしまう。ハルシオンを服用しすぎると、故障して暴走したままのPCのような状態になってしまうのだ。

現在、ハルシオンを服用している人は、2〜3日薬を断薬してみると良い。もし、離脱が発症しなければラッキーである。苦しくても、すぐに止めるべきだ。もし離脱が発症したら、減薬の計画を入念に立て、なるべく早く減薬を実行するべきだ。しかし、ある程度の絶不眠は覚悟しなければならない。それでも、この先待ち受けている生き地獄よりは、ずっとマシである。

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