減薬法の勘所

私の減薬経験を振り返ると、減薬は最も重要なポイントが2つある。1つは減薬期間、もう一つは減薬方法、そして最後に断薬をやり遂げるという強い意志だ。

減薬期間については、諸説があるが、殆どの経験者は、なるべく長期間かけるように勧める。なるべく長期と言われても、1ヶ月なのか、3ヶ月なのか、1年なのか、見当がつかない。私は、減薬前から既に半絶不眠だったので、絶不眠の恐怖から半年で済ませた。しかし、その後に完全絶不眠状態が1年近く続いた。1年半たった今でも90%は絶不眠だ。

そう考えると、減薬期間を1年くらいかけてもよかったなあと今は思う。

減薬は、時間をかけてゆっくり行ったほうが良い。具体的に期間を言えば、最低でも1年、離脱が酷い場合は2〜3年かけてもいいと思う。

薬を飲むのは面倒だし、減薬する過程で、薬が毒に思え、口に入れると吐き気を感じるようにもなったので、1日も早く断薬したいと思うことがある。しかし、減薬は最低でも1〜2年の時間をかけてゆっくりやったほうが良い。それは、減薬中及び断薬後の離脱症状を極力緩和するほうが、減薬を早めることよりずっと重要だからだ。しかし、残念ながら睡眠薬を減薬していくと、不眠は悪化し、酷い時は絶不眠にまで悪化してしまう。しかし、それは受け入れるしかないのだ。

減薬中にどんなに不眠が苦しくても、それを受け入れる覚悟は必要だ。絶不眠なんかより、ずっと苦しいことがある。それは、離脱である。離脱は人によって違うが、離脱が劇症化すると、末期患者のようになり、他機能不全を起こし、精神状態も不安定を極め、本当に動けなくなる。あんな状態になるより、死ぬほうがマシだと何度も思ったほど、僕の経験した底打ち(離脱症状の劇症化)は酷かった。

私の場合、減薬時は不眠も離脱も一時的に7割くらい良くなった。断薬したら、離脱も不眠もV字回復するように思えた。しかし、断薬後は肩の硬直と睡眠は減薬前より悪化した。

これは、減薬期間の問題なのか、減薬しても結局、絶不眠と肩の硬直は悪化したのかは、今はわからない。

しかし、これから減薬を進めようとする方には、1〜2年の減薬期間を取ってほしい。途中で何の変化も感じなかったら、期間を短縮するのはそれからでも遅くない。なるべく、離脱を発症しないように減薬期間は長めに取ってほしいと思う。

次は減薬の方法で、私は水溶タイトレーションを勧める。減薬の方法は、カット法と水溶タイトレーション法がある。カット法とは、ピルカッターなどで薬を砕きながら減薬する方法。水溶タイトレーションは、薬を100mlくらいの水で溶かし、まずは100mlの睡眠薬水溶液を作る。

例えば、そこからスポイトのようなもので0.5〜1mlくらいの少量を毎日少しづつ減じ、服用する方法だ。最初の日に服用するのが100mlだとすると、2日目は99.5mg、3日目は99.0mlなどと0.5mlづつ毎日薬を服用する量が減っていくので、毎日0.5%づつ減薬していることになるのだ。

この方法はかなり面倒くさい。しかし、毎日ほんの少量づつしか睡眠薬が減らないため、離脱の発症もマイルドで、不眠症がそれほどひどくない人は不眠も悪化することなく、断薬を終えることができるかもしれない。

最後に重要なのは、断薬を必ずやり遂げるという強靭な意思である。中には、最後のひとかけらは保険のつもりで、睡眠薬を服用していてもいいのではないかなどと言う医師や患者もいる。しかし、私はこの意見には大反対だ。無論、睡眠薬を服用しても、反跳不眠にならない体質の人、離脱がひどくならない体質の人、そういう人もいる。そういう人は、ひとかけらではなく、何錠飲んでも問題ないと思う。

しかし、睡眠薬を服用して反跳不眠や離脱を経験したことがあるのなら、絶対に断薬を諦めてはいけない。医師が最後のひとかけらを勧めるのは、薬に依存させたいから、通院させたいからであって、それは一理ある。しかし、患者が自ら、睡眠薬を完全に断薬しなくていいという気持ちが私には全くわからない。

睡眠薬は、蓄積型の毒薬だ。多くの場合、減薬の困難度と断薬後の回復期間は、服用期間に正比例している。どんなに微量でも、身体にプラスのことなどない。睡眠薬の量と期間の掛け合わせが大きいほど、脳の鎮静機能に対する障害が大きいと思ったほうがいいだろう。

あなたがこれから減薬を始めようとするなら、途中でステイしても、時には増薬しても構わない。身体に負担が少ないように、少しづつ、ゆっくりとおこないのが良い。

しかし、断薬をやり遂げる強い意志を持ち、時間がいくらかかっても、最終的には睡眠薬を断薬しなければ、本当の回復は無いのだ。

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