反跳性不眠と絶不眠

「反跳作用(はんちょうさよう、rebound effect)とは、同じ薬の服薬を中止するか、服用量が低下した時に一過的に出現する、症状の発症や再発である。再発の場合、その重症度はしばしば治療前より悪化している。」(Wikipediaより

反跳性不眠は、ハルシオン、デパスなどのベンゾゼアピン系睡眠薬や非ベンゾ系睡眠薬のマイスリーでも起きる。この定義では、ベンゾの血中濃度が顕著に低下し、自覚的に不眠を発症することなのだろう。もしそうだとすると、反跳性不眠は睡眠薬を停止、低下したときだけではなく常用している時にも起きる。それは、様々な睡眠薬の効果が低下し、最終的に平均睡眠時間が2時間以下になった不眠症最終段階だ。

私の経験では、睡眠薬を増やし、変えることを何年も繰り返していくと、1度服用した睡眠薬を時間をあけて再服用しても、以前と比較すると効き目が弱く、しかも有効期間も短い。初めて使った時に1ヶ月効果があった睡眠薬が、3週間、2週間とだんだんと作用期間が短くなり、何度も再服用しているうちに効果は殆どなくなる。私の体験では、聞いたことのある睡眠薬をとっかえひっかえ服用し続け、5年も経つと平均睡眠時間は2〜4時間程度、そして睡眠薬の有効期間も3〜5日しかなくなってしまう。これは、不眠症患者にとって恐怖だ。

「明日からどうやって眠ればいいのだろうか?」と毎晩悩んでいた。医師に言っても、他の眠剤を処方するか、向精神薬を飲めと言われる。迷ったあげく、以前処方された他の眠剤を服用して1〜2週間持たせることになる。それでも、4時間以上眠れる日はほどんどない。しかも、中途覚醒2〜3回は普通だ。それでも、4時間の睡眠を死守するために、毎日のように睡眠薬を調整する。2〜4種類の睡眠薬を細かく刻み、服用する。そうすると、だましだまし、また1〜2週間は持つ。これを繰り返し、2年ほど経った2017年後半には、平均就寝時間は2〜3時間にまで減っていた。そして、とうとう週単位で何回かは絶不眠の日が出てくるようになった。2017年は常用服用で反跳性不眠が発症した年だった。

おそらくだが、不眠症最終期には、耐性が形成されるのが極端に早くなったため、睡眠薬を変えても、その直後に耐性が形成され反跳性不眠を発症するのだろう。

ベンゾジアゼピンの長期服用は、GABA機能を低下させる。そこに、超短期で耐性が形成されることによって、常用離脱が生じると、既に平均睡眠時間2時間の不眠状態が更に悪化し、早期に絶不眠に陥る。不眠症最終期には、ベンゾジアゼピンを常用していても、こうして反跳性不眠が発症するのだ。

それまで、2016年〜2017年まで、自分にとって絶不眠は特別のものだった。よほどの事のない限り、睡眠薬を服用すれば、朝方に1時間だけでも眠れていた。たまたま絶不眠の日があったとしても、やはりその翌日は疲れて、通常より深く、長く眠れていた。

しかし、2016年頃から絶不眠が月に数日起きるようになった。しかも、月を追うごとに日数が着実に少しづつ増えていく。次第にメンタルが、絶不眠に追い詰められていく。

反跳性不眠とは、睡眠薬を停止したり、減じたりすることによって生じる不眠だ。しかし、これは自分から断薬、減薬というスイッチを押しているから認識できる症状であり、実は睡眠薬常用時から細切れ的には起きている不眠だ。そして、それが自覚できるのは、不眠症の最終期である。処方されたすべての睡眠薬に十分な耐性が形成され、平均睡眠時間が2時間以下になった後は、反跳性不眠が顕著に現れる。  不眠症の最終期には、耐性の形成が早く、常用量を服用していてもすぐに「突然減薬状態」になってしまうのだろう。

絶不眠という状態が今までよくわからなかった。しかし、それは睡眠薬の常用時であれ、減薬・断薬時であれ反跳性不眠の最悪レベルなのだ。つまり、ベンゾジアゼピン長期依存の体内で起きている、脳の過興奮状態なのである。

断薬・減薬や不眠症最終期の体内では、ベンゾゼアピンが不足してくると、ベンゾジアゼピンにより抑制されてきた神経系が何の抵抗も受けなくなり、一斉に活発化する。体内の興奮系メカニズムが抑制が効かず過活動状態なり、脳や抹消神経系は過興奮状態になる。そして、身体はベンゾジアゼピンがない状態に適応できるまで、ストレスに対してとても弱い状態になるのだ。こうして、不眠が絶不眠に悪化するのである。

睡眠というのは、長く起きていれば、いづれ疲れを感じ、眠気を感じ、あくびが出て、いづれは眠れると私達は妄信的に信じ込んでいる。だから、普通の人は、絶不眠は長く続けば、疲れて眠れるはずだと考える。しかし、それは大きな間違いだ。

反跳性不眠が続く限り、絶不眠は続くのだ。反跳性不眠を断ち切るには、どうしたらよいのか? 答えは、「ベンゾジアゼピンの全く無い状態に身体が適応」する時を待つしかないのである。つまり、それはベンゾジアゼピンの常用でも、減薬でもない、断薬のみで達成できるのだ。

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反跳性不眠と絶不眠” への15件のフィードバック

  1. こんにちは!

    良い方向に向かいつつありますね。

    光が見えてきて本当に良かった。

    断薬継続は絶対必須だと思いましたが、あまりの壮絶さにこちらまで気持ちがぶれそうでした(笑)

    そして、この「反跳性不眠と絶不眠」のタイトルのような記事が検索トップにくることを切に願います。shinさんが言ってたように。

    それにしても、どのタイトルも学者の論文レベルですね。

    近い体験していても、ここまで簡潔にしかも事実に基づいて書けません。

    まだ断薬半ばのしんどい時期なのに、仕事もして、相談も受け、精神薬の解明もし、尊敬の言葉しかありません。

    旅ではゆっくりして下さいね!

    1. ゆうさん、こんにちは。

      褒めてくれる方もいらっしゃいますが、僕はあまり文章は得意ではなく、しかも、構成も考えてないし、
      校正もしてないんですよ。家や海外だと、スマホで音声入力していることもありますし😅
      考えると、毎日書けなくなっちゃいますしね。😅

      不眠症で迷路に迷い込んでいた過去3年間、本当に誰にも相談できず、相談して通院するともっと
      悪くなるの繰り返しでした。

      まあ、皆さんも同じだと思いますが、あの孤立感、孤独感は耐え難いですよね。
      不眠症は、周囲も理解するのが難しいし、健常者なら何で1週間も一睡もしてないのに眠れないの?
      ということになってしまいます。1週間も一睡もせずに、どうして眠れないのか不眠症患者本人も理解
      できないのに、周囲に理解しろと言っても不可能ですよね。

      こういう自分と同じ苦しい思いをしてきた人達を1人でも多く勇気づけたいというのが僕の今の思いです。

  2. Shinさん

    ゆうさんと同感、まさに学者の論文レベルの内容、しかも簡潔明瞭ですね。
    頭が下がります。

  3. 孤立感、孤独感、、、よく分かります。

    私の場合は、、、大海原で板切れ一枚の上に座らされて、いつも不安定な気持ちの中、救助が来ると思いひたすら待つ日々だったような。

    途中から救助は来ないことを悟り、だんだん以前より強くなっていったように思います。

    こちらのブログは減薬の過程で発見し、時々訪問していましたが、あまりにリアルで怖くなって(すみません。この表現)、途中で開けなくなっていました。

    久しぶりに訪問しコメントしたくなったのは、shinさんの考えが断薬に行き着いておられるところに強く共感したからです。

    個人差がありますから、それが全てとは言えませんが。

    私は今現在、終着点に近づきつつありますから、辛い真っ只中のshinさんや他の訪問者の方に申し訳ない気がしたり、こうしてコメントすることすら「どうか?」と思うこともあります。

    でも、こういうコミュニティーが広がっていくことこそが、この問題を解決していく一つの手段だとも思います。

    だから、また、ときどき、いえ?頻繁に(笑)、させて下さいね!

    1. ゆうさん、こんばんは^_^

      いつもコメントをありがとうございます。
      楽しく読ませて頂いてます。

      一つ質問なんですがいつ頃最初に訪問して頂いたのでしょうか?

      酷い不眠症を克服された方は、良くなった事をもっと伝えていくべきだと思いますよ。ゆうさんのご経験も必ず聞いて、それを支えに治療に向かう人がいるはずです。僕がまずその一人ですから。

      僕は自分より酷い不眠症をブログや断薬.comの事後記録記事としては見たことがありますが、リアルタイム記録では見たことがありません。

      だから、自分が本当に眠れるようになるのか本当に心配でしたし、今も心配です😅が、必ず良くなると信じて、良くなった過程を不眠症の方々に伝えたいと考えています。

      まず、

      不眠の根源が睡眠薬であること、

      そして、治療法は断薬しかないこと

      断薬はかなり辛いが結果は必ずでること

      この3つを伝えていきたいです。

  4. 初訪問がいつ頃だったか?はっきり覚えてはないですが、減薬開始が2017年11月だから、その前後だと思うのですが。

    遡って読んだりしてたので、いつどうだか?はっきりしませんが、グローバルに治療されているんで驚いた記憶があります。

    私の場合、昨年の9月頃大きな揺り戻しがあり、目にするもの全てを不安に感じ、ネットの情報も恐怖で見れない時期がありました。そんなに怖い内容でもないのにです。

    数ヶ月前を振り返ると「よくここまで回復したな。」と思います。

    shinさんも点の眠りを感じるようになっているので、少しずつ回復していくと思われます。

    よく聞く「薄皮をはぐように、、、。」という感じだと思いますが、1〜2ヶ月ペースで変化していくのではないかと。

    心配無用だと思いますよ。

    私の経験ですと、過度な期待はほぼ裏切られるので、長い目で待つのがベストかなと思います。

    1. ゆうさん、おはようございます。

      2017年11月ですかあ。

      それは、僕の人生の最悪の半年間の入口ですね。僕は、2017/12-2018/5は、人生最悪の期間でした。不眠症は最悪期に入り、治療法が全くわからず、頼れる人もいない。ベンゾと向精神薬の離脱で、希死念慮をはじめて経験した時期でもありました。

      あの時のブログを読み返したことはありませんが、完全に方向が見えなくなって絶望した時期ですねえ。

      よく、頑張らなくてもいい目標なんてなくてもいいという人がTwitter などでは多いような気がしますが、病に向き合っている時は、何か目標というか、向かっていく方向が見えていないと、毎日の生活をどう送っていいのかわからなくなりますよねえ。

      不眠の原因を誤診し、症状を悪化させ、患者に治療の方向感を喪失させる。
      精神科は、本当に千害あって一利無しですねえ。

  5. 度々すみません。

    安易なことは言えませんが、現在3ヶ月だから、初夏には今とは全く違う景色が見えると思いますよ。

    辛い日々もう少し耐えましょう。

    1. ゆうさん、こんばんは。

      希望しかサバイブする術がありませんから夏に3時間眠れることを目指して頑張ります。

      今は筋トレでさえできないから夏までに有酸素運動や筋トレをして爽快感が味わえるようにしたいです。

    2. ゆうさん、おはようございます。

      質問なのですが、睡眠回復期に眠気やつかれを感じましたか?僕は眠気や疲労感がほとんどなく、元気なわけではないのですが、いつも力が入らない感じなのですが、運動したり、働いても疲れるという感覚があまりありません。

      眠気や疲労感も断薬後の時間とともに戻ってくるのでしょうか?

  6. こんばんわ!

    そう言えば、絶不眠の時ってなぜか全然疲れてなかったです。眠れないことに腹立たしいのに身体は元気だから、どうして?と思い怖かったです。shinさんもそうなのですね。だったら大丈夫かと。私もそうだったから。私は今頃やっと眠気や疲労感を感じています。まあまあ心地良い安心感のある感じの。

    おそらく交感神経バリバリ優位の時期は、身体が微妙な感覚を感じにくいのではないでしょうか。shinさんの質問でその頃の自分を確認できました。

    「眠れないのに疲れない」ことは本人にとってはとても怖いこと。でも、私が一度だけ受診した頭痛外来の医師は「あなたが今ここに生きて来ている、ということは大丈夫だということです。全く眠っていないと感じていても、横になっているだけで生きれるだけの休息をとれているんですから。」と話してましたね。根拠があるのかどうかは分かりませんが。

    1. ゆうさん、おはようございます。

      やはり、そうですか。GABA受容体の損傷が激しいと、おそらく疲れ、眠気を感じないのですね。
      僕はもうそういう状態がおそらく5年以上続いています。眠気も睡眠薬を飲まないと感じない。
      疲れはもっと前かもしれない。10年くらいになるかもしれません。登山をしても疲れていない自分が
      怖かったのを覚えていますから、多分10年くらいですね。ただ、眠気を感じなくなったのは、5年くらい
      かもしれません。

      「眠れないのに疲れない」ことは怖いですよね。僕も嫌というほど悩んできましたが、やっとその謎が
      解けたような気がします。

  7. こんにちは

    今とても苦しいので、全く身につまされます。減薬を始めていますが、思うようにいきません、断薬をするのがどれだけ地獄か身をもって感じています
    私は若くないので体力がないし体が持つか悩みます、ですが、かゆみと胃痛の副作用が酷く断薬するしか逃れる道はありません、全く死にたくなります
    Shinさんの意志の強さに感服しました
    全くおっしゃる通り医療はデタラメです。

    1. かよさん、はじめまして。

      高齢だからと言って、原薬をあきらめないでください。
      たとえ薬を全て止めることが難しくても、原薬ができるかもしれません。人によっては、原薬は地獄の苦しみです。しかし、薬の常用期と全く違うのは、治療の方向性が明確にあり、自分が何と戦えばいいのかハッキリすること。そして、減薬の過程で今まで諦めていた体調不良が、少しずつ解消されていくことです。主症状が治らなくても、ほとんどの体の不調は、減薬により解消される可能性は高いと思います。

      年齢を理由に諦めるのは、やめましょう。強い意志を持って、薬を減らすことに前向きに取り組みましょう。

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