夜行特急

誰にも人生に影響を与えた本があると思う。僕の場合、バックパッカーのバイブル「 #深夜特急 」だ。おそらく、僕が最近はまっている撮影がてらの小旅行も、離脱で忘れていたあの東南アジアを放浪していた時の旅人魂が戻ってきたのではないかと思っている。

僕は、30代後半で離婚し、失意の中で会社を辞め、1ヶ月間バックパッカーを経験した。その旅行で、僕の人生観は180度変わった。何か自分がとてつもなく小さな世界で、どうでもいいようなことにこだわっていたような気になった。放浪旅行から日本に帰りたくなかった。それから、僕は、転職するが、海外1人旅が趣味になり1年に3〜4回は休暇を取ってアジアを流れ歩いていた。遅れた青春を取り戻すように、ゲストハウスや安ホテルをウォークインで取り、バスで名もない街を放浪したものだ。その時に出会ったのが「 #深夜特急 」だった。この小説は、大沢たかおが主演で1990年代にテレビドラマ化もされている。

この本が、小説界でどの程度の評価を受けているか僕は知らない。しかし、僕にとって、この本は衝撃でした。なぜなら、小説が書かれたのは1980年代で、それから既に30年以上経っていたにもかかわらず、旅人が現地で感じる驚き、感動、違和感、開放感、寂しさ、不安が、私が経験したそれと全く同じだったからだ。旅人の心情は、時代を超えて全く変わっていないのだ。沢木耕太郎が当時感じていたことは、僕が2006年〜2010年でも殆ど同じだった。

それから、15年以上の月日が流れた。現地の詳しい様子や情報もSNSで簡単にわかってしまう。それでも、旅人は同じような新鮮な驚きや喜びを感じることができるのだろうか?

アジアの放浪は過酷だ。しかし、あの自由気ままで、驚きと笑いの連続のあの感覚をまた味わいたいと僕は潜在的に感じていたに違いない。それをマイルドに実現したのが、この撮影旅行なのだと思う。

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